4 貴女の妻①
私はカナコを愛している。
カナコとは高校生のときに出会った。
なんてことない高校生活を送って卒業を迎えて、進学するカナコと就職する私。4年後、カナコが私の取引先に就職してからは、長く濃い時間を過ごしてきた。
ものの考え方や感じ方、価値観、話し方や気の使い所、、、
全く同じではないけど、似通っている部分も多くて、一緒にいて心地がいい。わかってくれる、くれているという安心感もある。嫌いと言われたって、信じようと思わない。そんなことはあり得ないと、妙な自信があるの。
どうしてこんなに気が合うのか疑問に思っていたけど、その理由は、貴女と私が夫婦だったからなのね。
3 海で亡くなった過去
私は海が怖かった。
プールや海は、水位が首元に達すると呼吸ができなくなるような怖さがあった。
夜の海など殊更怖くて、どこかに連れて行かれるような、飲み込まれるような、そんな恐怖を感じていた。
当時お付き合いをしていた恋人が、デート先に夜の海を選んだときも、車から降りることはなかった。
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海に浮かぶ自分。
目の前で噴火する大きな火山。
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そんな画が浮かんできたのは、だいぶ月日が経ったころ。
なんとなく、自分は海で亡くなった経験があるんだろうな、と考えていたから、納得もできた。
今、当時感じていたほどの恐怖は感じない。
海はきれいで、癒しをもらう事の方が多いからかな。
ただ、きれいと一緒に、ほんの少し、僅かな怖さを思い出す時があるだけ。
2 商家の女主人の養女
今世、仕事の関係で知り合いになったコーヒーショップの女性オーナーさん。
行く度にコーヒーをご馳走してくれたり、おやつを準備しておいてくれたり、とにかくとても優しく、よくしてくれる。
なんでここまでよくしてくれるんだろう?
と思った次の瞬間に浮かんできた。
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着物を着た3歳くらいの女の子。
庭の見える和室で母親らしい女性の膝上で抱かれている。
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女の子は私で、母親のような女性がコーヒーショップの女性オーナーさん。
過去世、親子としての関係があったみたい。
ただ、血のつながりはなく、私は養女として迎えられたようだった。店は彼女1人で切り盛りしていて、女主人としての顔はきつい雰囲気もあったけど、私といるときはとても優しく、柔らかい笑顔を見せてくれていて、愛されていたんだと感じ取ることができた。
今世は、今の私にできる範囲で、貴女に感謝を伝えていこうと思う。
1 とある夫婦の子ども
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誕生日を迎えたその日、母に連れられて族長である父に挨拶をしている。
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そんな場面が頭の中に浮かんできた。
この過去世での父と母は、今世でも結ばれて夫婦になっている。私との血のつながりはないが、幼い頃に母親から縁を繋いでもらってから現在に至るまで、ことある毎にお世話になってきた。過去世での厳格なイメージは、今世にも現れている気がする。
他人ではあるけど、長い時間近くで過ごしてきたせいか客観視しづらい。
改めて考えることにしよう。